- M&A式割安株式投資法のメリットが分かる!
- 実際のM&A式割安株式投資法の使い方が分かる!
自分なりにデータを見てもイマイチ確証が持てない…
M&A式割安株式投資法を使えば、企業の財務情報から現在の株価の適正価格をおおまかに測ることができます。
今買おうとしている株が割安なのか、割高なのか…
調べれば調べるほど、答えが分からなくなっていく…
こんな風に株の購入に悩んだこと、ありますよね。
思い当たる節があれば、ぜひ今回のM&A式割安株式投資法に関する記事を読んでみてください。
もしかすると、その悩みが一気に解決できるかもしれませんよ!
M&A式割安株式投資法とは?
M&A式割安株式投資法とは、以下の条件を満たせば株を買う、という投資法です。
M&A式割安株式投資法による投資条件
- ある株価算定式から算出した理論上の株価 > その時点の実際の株価
では、上の「ある株価算定式」とは何でしょうか?
それは以下の通りです。
M&A式割安株式投資法で使用される株価算定法
-
短期投資の場合:市場株価法
- 長期投資の場合:収益還元法
「市場株価法」と「収益還元法」とは?
ここから、「市場株価法」と「収益還元法」について説明します。
これらはどちらも、M&A等で使われる株価算定法の1つです。
それらの株価算定法の中で、おそらく株式投資に最も役立つのではないかと思われるのが、この二つです!
M&A等で使われる株価算定法は大きく3種類に分けられます。
それが、①マーケットアプローチ、②インカムアプローチ、③コストアプローチです。
それらの特徴は次の表の通りです。
①マーケットアプローチ | ②インカムアプローチ | ③コストアプローチ | |
長所 | 短期的な株価を知るには適している | 将来の成長性を加味している | 比較的簡単に計算できる |
短所 | 短期的な市場の影響を受けやすい | 株価が現時点の実際のものとかけ離れてしまう | 継続企業の算定には不向き |
上の表からも分かるように、短期投資なら①マーケットアプローチ、長期投資なら②インカムアプローチが有効なのです!
そして、市場株価法は①マーケットアプローチの1つ、収益還元法は②インカムアプローチの1つ。
そのため、短期投資なら「市場株価法」、長期投資なら「収益還元法」を採用しています!
市場株価法や収益還元法もその一つ。
他の算定法ではなくこの二つを選んだ理由は、主に「客観性が高い」、「簡便的である」からです。
ただ、人によっては判断が分かれるところですので、自分が一番いいと思う算定法を探してみてもいいと思います!
市場株価法
市場株価法は、以下の式で表されます。
市場株価法の計算式
- 理論株価 = (各日の終値×出来高株数の合計値)÷(出来高株数の合計値)
※集計期間は1か月・3か月・6か月のいずれかが一般的です。
例えば、下のような値動きの株があるとします。
日付 | 終値(円) | 出来高株数(株) | 終値×出来高株数 |
3/1 | 476 | 13,800 | 6,568,800 |
3/2 | 460 | 21,800 | 10,028,000 |
3/3 | 455 | 11,400 | 5,187,000 |
3/4 | 446 | 42,100 | 18,776,600 |
3/5 | 449 | 6,600 | 2,963,400 |
3/8 | 453 | 12,000 | 5,436,000 |
3/9 | 456 | 11,900 | 5,426,400 |
3/10 | 470 | 27,700 | 13,019,000 |
3/11 | 463 | 18,600 | 8,611,800 |
3/12 | 468 | 15,300 | 7,160,400 |
3/15 | 470 | 13,700 | 6,439,000 |
3/16 | 467 | 20,800 | 9,713,600 |
3/17 | 477 | 16,600 | 7,918,200 |
3/18 | 482 | 32,700 | 15,761,400 |
3/19 | 496 | 31,300 | 15,524,800 |
3/22 | 493 | 21,400 | 10,550,200 |
3/23 | 481 | 27,500 | 13,227,500 |
3/24 | 481 | 20,800 | 10,004,800 |
3/25 | 480 | 19,500 | 9,360,000 |
3/26 | 480 | 9,600 | 4,608,000 |
3/29 | 470 | 27,900 | 13,113,000 |
3/30 | 476 | 15,700 | 7,473,200 |
3/31 | 478 | 5,200 | 2,485,600 |
合計 | 443,900 | 209,356,700 |
評価基準日前1か月間を算定期間とした場合、4/1における市場株価法による理論株価は以下のようになります。
理論株価 = 209,356,700÷443,900 = 471.6円
収益還元法
また、収益還元法は以下の式で表されます。
収益還元法の計算式
- 理論株価 = ①調整後価値÷発行済株式総数
- ①調整後価値 = ②還元価値+(現金預金+貸付金)-(借入金+社債)
- ②還元価値 = ③税引後営業利益÷資本コスト(%)
- ③税引後営業利益 = 営業利益×(1-実効税率)
※資本コストとは、会社の資金調達に伴う費用を指します。
例えば、ある事業年度の企業が以下の数字だったとします。
(現金預金2,919百万円 借入金1,138百万円 貸付金・社債0百万円 営業利益250百万円 実効税率30% 設定上の資本コスト6% 発行済株式総数5,972千株)
この場合、以下のようになります。
税引後営業利益 = 250万円×(1-30%) = 175百万円
還元価値 = 175百万円÷6% = 2,916.6百万円
調整後価値 = 2,916.6百万円+(2,919百万円+0百万円)-(1,138百万円+0百万円) = 4,697.6百万円
理論株価 = 4,697.6百万円÷5,972千株 =786.6円
M&A式割安株式投資法の実際の検証結果(2021年7月1日時点)
では、上で説明したM&A式割安株式投資法を用いると、実際の企業はどうなるのでしょうか?
これから実際に検証していきます。
今回は、時価総額ランキングTOP5の企業を選びました。(2021年7月30日時点)
それぞれの2021年7月1日基準の株価で算定していきます。
(※簡便的処理として、貸付金・借入金・社債は0とし、直前期の数字を参照しております)
トヨタ自動車
トヨタ自動車は時価総額31,993,690百万円で第1位。(2021年7月30日時点)
短期投資
市場株価法によると、7/1時点の理論株価は以下の通りです。(基準日前1か月間で算定)
理論株価 = 1,443,669,382,200÷146,859,200 = 9,830.3円
長期投資
収益還元法によると、7/1時点の理論株価は以下の通りです。(資本コスト7%・実効税率30%として算定)
税引後営業利益 = 2,197,748百万円×(1-30%) = 1,538,423.6百万円
還元価値 = 1,538,423.6百万円÷7% = 21,977,480百万円
調整後価値 = 21,977,480百万円+(5,100,857百万円+0百万円)-(0百万円+0百万円) =27,078,337百万円
理論株価 = 27,087,337百万円÷3,262,997,492株 = 8,298.6円
検証結果
ここで、7月1日時点の実際の株価は9,690円。
つまり、短期的には「割安」、長期的には「割高」ということになります。
キーエンス
キーエンスは時価総額14,772,435百万円で第2位。(2021年7月30日時点)
短期投資
市場株価法によると、7/1時点の理論株価は以下の通りです。(基準日前1か月間で算定)
理論株価 = 485,252,408,000÷8,749,800 = 55,458.7円
長期投資
収益還元法によると、7/1時点の理論株価は以下の通りです。(資本コスト7%・実効税率30%として算定)
税引後営業利益 = 276,758百万円×(1-30%) = 193,730.6百万円
還元価値 = 193,730.6百万円÷7% = 2,767,580百万円
調整後価値 = 2,767,580百万円+(401,201百万円+0百万円)-(0百万円+0百万円) = 3,168,781百万円
理論株価 = 3,168,781百万円÷243,207,684株 = 13,029.1円
検証結果
ここで、7月1日時点の実際の株価は56,230円。
つまり、短期的には「割高」、長期的には「かなり割高」ということになります。
ソニーグループ
ソニーグループは時価総額14,344,544百万円で第3位。(2021年7月30日時点)
短期投資
市場株価法によると、7/1時点の理論株価は以下の通りです。(基準日前1か月間で算定)
理論株価 = 763,265,931,500÷70,788,500 = 10,782.3円
長期投資
収益還元法によると、7/1時点の理論株価は以下の通りです。(資本コスト7%・実効税率30%として算定)
税引後営業利益 = 971,865百万円×(1-30%) = 680,305.5百万円
還元価値 = 680,305.5百万円÷7% = 9,718,650百万円
調整後価値 = 9,718,650百万円+(1,786,982百万円+0百万円)-(0百万円+0百万円) = 11,505,632百万円
理論株価 = 11,505,632百万円÷1,261,058,781株 =9,123.8円
検証結果
ここで、7月1日時点の実際の株価は10,940円。
つまり、短期的にも長期的にも「割高」ということになります。
ソフトバンクグループ
ソフトバンクグループは時価総額11,779,835百万円で第4位。(2021年7月30日時点)
短期投資
市場株価法によると、7/1時点の理論株価は以下の通りです。(基準日前1か月間で算定)
理論株価 = 1,662,744,902,400÷209,365,300 = 7,941.8円
長期投資
収益還元法によると、7/1時点の理論株価は以下の通りです。(資本コスト7%・実効税率30%として算定)
税引後営業利益 = 2,197,748百万円×(1-30%) = 1,538,423.6百万円
還元価値 = 1,538,423.6百万円÷7% = 21,977,480百万円
調整後価値 = 21,977,480百万円+(1,768,982百万円+0百万円)-(0百万円+0百万円) = 23,746,462百万円
理論株価 = 23,746,462百万円÷1,722,953,730株 =13,782.4円
検証結果
ここで、7月1日時点の実際の株価は7,726円。
つまり、短期的にも長期的にも「割安」ということになります。
NTT
NTTは時価総額10,931,961百万円で第5位。(2021年7月30日時点)
短期投資
市場株価法によると、7/1時点の理論株価は以下の通りです。(基準日前1か月間で算定)
理論株価 = 282,854,247,050÷97,898,300 = 2,889.3円
長期投資
収益還元法によると、7/1時点の理論株価は以下の通りです。(資本コスト7%・実効税率30%として算定)
税引後営業利益 = 1,671,391百万円×(1-30%) = 1,169,973.7百万円
還元価値 = 1,169,973.7百万円÷7% = 16,713,910百万円
調整後価値 = 16,713,910百万円+(935,727百万円+0百万円)-(0百万円+0百万円) = 17,649,637百万円
理論株価 = 17,649,637百万円÷3,900,788,940株 =4,524.6円
検証結果
ここで、7月1日時点の実際の株価は2,880円。
つまり、短期的にも長期的にも「割安」ということになります。
まとめ
今回は、M&式割安株式投資法についてご紹介しました。
ご紹介した投資に用いる株価算定法をもう一度おさらいします。
M&A式割安株式投資法で使用される株価算定法
-
短期投資の場合:市場株価法
- 長期投資の場合:収益還元法
この算定法により、現時点での株価が短期・長期で割安かどうかを簡便的に知ることができます!
ただ、この数字は必ずしも正しいわけではないので、より正確な数字を知りたいのでしたら他の算定法も活用することもオススメします!
このM&A式割安株式投資法を適切に使えるようになれば、テンバガーも夢じゃないかもしれません!